ストレートを投げ分ける藤川球児の投球術

藤川球児, 阪神タイガース藤川球児, 阪神タイガース

藤川球児

ストレート、フォーク、カーブ。
3つの球種を用い、ゲームの終盤における難しい局面で打者と対峙する藤川球児。

39歳になった2019年シーズン。

2016年にタイガースに復帰以降、最高といえる成績を残しチームのAクラス復帰に貢献しました。

集計期間は2019年シーズンの一般的に勝負処とされる8月以降の22ゲームで記録された登板データに基づいています。

藤川球児のストレートについて

ストレートを投じた割合

この期間中に藤川球児は24イニング396球を投げました。

1イニングあたりの投球数は16.5球。

投げた球種とその内訳は以下のとおりです。

藤川球児の球種と内訳

3球種のみで、知ってのとおりストレートに偏りがあります。

396球中293球(74%)がストレートでした。

ストレートの球速

藤川球児のストレートの球速

ストレートの最速が150km/hというのは、現代のプロ野球においては凡庸といえるでしょう。
特に速くはありません。
であるにも関わらずストレートを多投し、多くのアウトを奪っています。

ちなみに最速のストレートと最も遅いストレートは誰に投じられたものか?

最速のストレートは、

日付 打者 タイプ 球場 結果
2019年9月16日 阿部 慎之助 右投げ左打ち 東京ドーム ファウル

最も遅いストレートを投げたのは、

日付 打者 タイプ 球場 結果
2019年10月20日 陽 岱鋼 右投げ右打ち 甲子園 ファウル

でした。

ストレートで奪ったアウトの割合

藤川球児がストレートで奪ったアウトの割合

投球の割合以上にストレートでアウトを獲得した割合は高くなっています。

では、ストレートで奪ったアウトの内訳はどうなっているでしょうか?

藤川球児がストレートで奪ったアウトの内訳

意外とフライアウトの方が多い。
空振りの三振と見逃しの三振の値を足してもフライアウトの数には及びません。

一方で集計期間中に藤川球児は10本の被打を許していますが、割合でいうとストレートが9本(90%)、フォークが1本(10%)でした。

藤川球児のストレートを打ったのは?

以下のテーブルは、集計期間中に藤川球児が投じたストレートからヒットを記録した一覧です。

ざっと見て気になったのは一桁台の数字、つまり高めのストレートを打たれている点です。

補足させてもらうとコース:NOというのは下のテーブルの各セルの番号のことです。

バッター 内容 コース
松山 竜平
(左打ち)
2塁打
(ストレート)
コース:No4
雄平
(左打ち)
本塁打
(ストレート)
コース:No17
遠藤 一星
(左打ち)
ヒット
(ストレート)
コース:No8
阿部 寿樹
(右打ち)
2塁打
(ストレート)
コース:No8
堂上 直倫
(右打ち)
ヒット
(ストレート)
コース:No12
渡辺 勝
(左打ち)
2塁打
(ストレート)
コース:No18
宮﨑 敏郎
(右打ち)
2塁打
(ストレート)
コース:No7
會澤 翼
(右打ち)
ヒット
(ストレート)
コース:No7
荒木 貴裕
(右打ち)
2塁打
(ストレート)
コース:No7
福田 永将
(右打ち)
ヒット
(フォーク)
コース:No23

藤川 球児が投げた293球のコースと被打の内訳 ※がストライクゾーンの目安

No.1
7球
No.2
16球
No.3
23球
No.4
1本/13球
No.5
6球
No.6
3球
No.7
3本/31球
No.8
2本/15球
No.9
6球
No.10
3球
No.11
5球
No.12
1本/30球
No.13
25球
No.14
11球
No.15
1球
No.16
8球
No.17
1本/32球
No.18
1本/7球
No.19
9球
No.20
1球
No.21
13球
No.22
18球
No.23
6球
No.24
4球
No.25
0球

このテーブルにおけるNO.15はいわゆるど真ん中のことですが、藤川球児はストレート293球中、25球そこに投じています。

きちんと比較こそしていませんが、25球も投げて1本もヒットを打たれていないのは稀なケースではないかと思います。

これは藤川球児のストレートの特徴と無関係ではないのかもしれません。

藤川球児のストレートの軌道

技術的なことはわからないのですが、映像レベルで藤川球児の投球を見ていると、リリースした瞬間は【低すぎる】と感じてもミットにおさまる時には際どい高さにコントロールされている、なんてことがあります。

直感とは異なる軌道でボールが浮き上がってくる。これはストレートの平均球速と関係しているらしく、藤川球児はストレートを投げる際に特殊な握り方でに縦回転のスピンをかけていて、その効果が最も現れやすい、ボールが空気抵抗を受けて浮き上がりやすい球速が145キロから150キロくらいである、と何かのインタビューでこたえていたのをうっすら憶えています。

藤川球児のこのレンジの球速は制球によるものなのです。コースも含めたコントロールの一環であると。かつて藤川球児160km/hに迫るストレートを投げていましたが、それでは変化が生じる前にボールがミットに到達してしまうため自身のストレートの特徴は活きないということです。

藤川球児の投球フォームはノーマルといっていい部類に入ると思います。とりわけタイミングが取りずらいというようなものではありません。しかし、直感とは異なる軌道で対戦相手の反応を遅らせたり、見誤らせることには成功しています。

懸念材料について

藤川球児と同年代の選手を見ると、当然ながらフル稼働できている選手はほとんどいません。チームの主力といえるのはヤクルトの石川雅規くらいでしょうか。

選手名 生年月日 ドラフト チーム
藤川 球児 1980年7月21日(38歳) 1998年(1位) 阪神
松坂 大輔 1980年9月13日(38歳) 1998年(1位) 西武
石川 雅規 1980年1月22日(39歳) 2001年(自由枠) ヤクルト
久保 裕也 1980年5月23日(39歳) 2002年(自由枠) 楽天
永川 勝浩 1980年12月14日(38歳) 2002年(自由枠) 引退

藤川球児が打者を一人抑えるのにかかっているコストは増大傾向にあります。具体的にいうと2016年、阪神に復帰して以降、与四球は増えています。

2005年に80回の登板を記録し、主力投手の一人として定着してから2012年シーズンまでの平均与四球が17であるのに対し、2016年から2019年は30.75になっています。

集計期間における藤川球児のストレートがストライクゾーンに投じられた割合は293球中、166球で56%。依然としてストライクゾーンで勝負できるだけの球威、制球力があるという現われではありますが、四球の増加は看過できない問題として付きまとうでしょう。藤川クラスの投手になると常に対戦相手のターゲットにされています。

今後も投球の組み立てのなかでストレートの制球に対する依存度が高まれば、いくら藤川球児のように自身の投球に対する理解が深い投手であったとしても対打者との優位性のバランスは崩れやすいものになっていくではないでしょうか?