M.デムーロの不調を騎乗成績の推移、比較で見る

JRAに移籍してからの勝利数、勝率の推移を見ていると2017年をピークにデムーロの成績は下降しています。
年度 | 騎乗数 | 勝利数 | 勝率 |
---|---|---|---|
2015 | 643 | 118 | 18.4% |
2016 | 742 | 132 | 17.8% |
2017 | 669 | 171 | 25.6% |
2018 | 642 | 153 | 23.8% |
2019 | 561 | 89 | 15.9% |
不調の原因についてはいろいろ言われているようですが、それらがどの程度パフォーマンスに影響しているかを計り知ることはできません。
なので、ある程度わかりやすいパラメータを規定して結果の推移を見て活きたいと思います。
G1レースで人気馬に乗った割合
G1レースともなればどの陣営も万全の準備をしようとします。
レースにおいてジョッキーが担う役割はとても重要です。
通常実力のある馬にはふさわしいジョッキーが乗ることになります。
2019年12月13日現在においてリーディングジョッキーはクリストフ・ルメール。2位は川田将雅。
デムーロと他のジョッキーを比較するとなると煩雑になってしまうので嫌なんですが、このセクションだけは比較をしておこうと思います。
ルメールの2019年度12月13日現在におけるG1レースの成績
16レース中6レースで1番人気の馬に乗り、3勝しています。結果だけみれば、やはりさすがという感じ。春には騎乗停止があったのでそれがなければ数字は変わっていたわけですがそこは考慮に入れません。
人気 | レース名 | 着順 | 馬名 |
---|---|---|---|
2 | フェブラリーS | 2 | ゴールドドリーム |
4 | 高松宮記念 | 8 | ロジクライ |
2 | 桜花賞 | 1 | グランアレグリア |
1 | 皐月賞 | 1 | サートゥルナーリア |
1 | 天皇賞(春) | 1 | フィエールマン |
1 | NHKマイルC | 5(降) | グランアレグリア |
1 | 安田記念 | 3 | アーモンドアイ |
2 | 宝塚記念 | 5 | レイデオロ |
2 | スプリンターズS | 1 | タワーオブロンドン |
5 | 秋華賞 | 15 | コントラチェック |
2 | 菊花賞 | 9 | ニシノデイジー |
1 | 天皇賞(秋) | 1 | アーモンドアイ |
5 | エリザベス女王杯 | 4 | センテリュオ |
8 | マイルチャンピオンS | 15 | レイエンダ |
7 | ジャパンC | 8 | ムイトオブリガード |
1 | チャンピオンズC | 2 | ゴールドドリーム |
川田将雅の2019年度12月13日現在におけるG1レースの成績
今期序盤は絶好調でリーディング争いでぶっちぎっていた川田将雅ですが、終盤に向けてやや失速。
G1で騎乗する馬は軒並み人気なっていた印象がありますが、実際のところはどうだったのでしょうか
1番人気に乗った機会は6レースですが、0勝。G1の勝利はクリソベリルのみという結果でした。
過大評価されている馬に乗っているようにも思いますが、G1レースで1番人気の馬に6度騎乗しています。まあ、それ自体ですごいことではありますが。
人気 | レース | 着順 | 馬名 |
---|---|---|---|
7 | 高松宮記念 | 9 | アレスバローズ |
2 | 大阪杯 | 2 | キセキ |
1 | 桜花賞 | 4 | ダノンファンタジー |
4 | 皐月賞 | 2 | ヴェロックス |
3 | NHKマイルC | 4 | ダノンチェイサー |
6 | ヴィクトリアマイル | 8 | ミッキーチャーム |
4 | 優駿牝馬 | 5 | ダノンファンタジー |
2 | 東京優駿 | 3 | ヴェロックス |
2 | 安田記念 | 16 | ダノンプレミアム |
1 | 宝塚記念 | 2 | キセキ |
1 | スプリンターズS | 3 | ダノンスマッシュ |
1 | 秋華賞 | 8 | ダノンファンタジー |
1 | 菊花賞 | 3 | ヴェロックス |
3 | 天皇賞(秋) | 2 | ダノンプレミアム |
9 | エリザベス女王杯 | 6 | サラキア |
1 | マイルチャンピオンS | 2 | ダノンプレミアム |
2 | ジャパンC | 3 | ワグネリアン |
2 | チャンピオンズC | 1 | クリソベリル |
M.デムーロの2019年度12月13日現在におけるG1レースの成績
G1レースには18回騎乗し、1番人気の馬に乗ったのは2度でそのうち1勝しています。気がかりなのは二桁着順が多いことと、オークス以来勝てていないこと、主戦をつとめていた馬たちが他の騎手に乗り代わり、結果を出されてしまった点です。
確かに悪循環に陥って抜け出すことができていない感じです。
人気 | レース名 | 着順 | 馬名 |
---|---|---|---|
3 | フェブラリーS | 10 | オメガパフューム |
9 | 高松宮記念 | 16 | ダイメイプリンセス |
3 | 大阪杯 | 11 | ペルシアンナイト |
5 | 桜花賞 | 13 | アクアミラビリス |
2 | 皐月賞 | 4 | アドマイヤマーズ |
2 | 天皇賞(春) | 4 | エタリオウ |
2 | NHKマイルC | 1 | アドマイヤマーズ |
7 | ヴィクトリアマイル | 18 | カンタービレ |
1 | 優駿牝馬 | 1 | ラヴズオンリーユー |
4 | 東京優駿 | 18 | アドマイヤジャスタ |
8 | 安田記念 | 10 | ペルシアンナイト |
6 | 宝塚記念 | 3 | スワーヴリチャード |
7 | 秋華賞 | 13 | サトノダムゼル |
13 | 菊花賞 | 8 | カウディーリョ |
13 | 天皇賞(秋) | 15 | ランフォザローゼス |
1 | エリザベス女王杯 | 3 | ラヴズオンリーユー |
13 | ジャパンC | 15 | タイセイトレイル |
9 | チャンピオンズC | 14 | ワイドファラオ |
デムーロが1番人気馬に騎乗した割合とその勝率の推移を見る
1番人気馬に騎乗したときの勝率というのは重要で、おそらく上位にいるジョッキーほどに高いはずです。
年度 | 騎乗数 | 1番人気回数 | 勝利数 | 勝率 |
---|---|---|---|---|
2015 | 643 | 165 | 49 | 29.7% |
2016 | 742 | 212 | 61 | 28.8% |
2017 | 669 | 277 | 103 | 37.2% |
2018 | 642 | 279 | 86 | 30.8% |
2019 | 561 | 166 | 61 | 36.7% |
勝率だけでいえば過去5年間で2番目に良い数字ですが、騎乗回数が減少しています。このセクションでの見るべきデータがわかりづらいので、本意ではありませんが再度ルメール、川田将雅のデータも見てみましょう。
C.ルメールが1番人気馬に騎乗した割合とその勝率の推移を見る
ルメールの数字は本当に着実です。初年度は意外にも1番人気馬に乗った回数が少ないけれども勝率は34%弱。1番人気馬に騎乗するほどに率は下がっていきますが、武豊のレコードを塗り替えた2018年度がピークという感じでしょうか。
ルメールはJRAのベストジョッキーなわけですから、現状においてこの数字が一人のジョッキーが担うことのできる限界といっていいのかもしれません。
年度 | 騎乗数 | 1番人気騎乗回数 | 勝利数 | 勝率 |
---|---|---|---|---|
2015 | 573 | 174 | 59 | 33.9% |
2016 | 787 | 299 | 110 | 36.8% |
2017 | 812 | 341 | 130 | 38.1% |
2018 | 774 | 375 | 148 | 39.5% |
2019 | 611 | 307 | 106 | 34.5% |
川田将雅が1番人気馬に騎乗した割合とその勝率の推移を見る
年度 | 騎乗数 | 1番人気騎乗回数 | 勝利数 | 勝率 |
---|---|---|---|---|
2015 | 657 | 124 | 38 | 30.6% |
2016 | 719 | 214 | 77 | 36.0% |
2017 | 595 | 142 | 43 | 30.3% |
2018 | 566 | 141 | 45 | 31.9% |
2019 | 553 | 241 | 96 | 39.8% |
意外なのは騎乗数自体の少なさ。ルメールより乗っていないんですね。で、1番人気馬に騎乗しての勝率でいえば2019年の39.8%はこの比較上では最高の値ですが、如何せん騎乗数自体が少ない。300回乗ってこのレートが維持できるかはちょっと疑問です。
それでもやはり信頼の厚いトップジョッキーであることは間違いありません。
1番人気馬騎乗した場合の勝率の推移って・・・
ひょっとしたら、この数字は野球の打率の推移と似ているのかもしれません。比較はしていませんが。1番人気の馬に300回騎乗することを規定だとすれば、たとえどんな実力者であっても4割以上勝つことは難しいと。
走るのは馬です。馬には所有者がいて、生産者がいて、管理者がいて、そうした一々を取りまとめるコーディネーターやエージェントがいて。
こうした様式というのはおそらく競馬先進国においては共通といっていいのでしょうけれども、日本競馬は日本文化のうえに成り立っており、ということを考えるとヨーロッパ文化圏のデムーロやルメールにとっては関係が長く続くほどに対処しづらい問題が生じることもあるでしょう。
オーナー、スポンサーからの評価
良い馬には良い騎手が乗るというのはセオリーといっていいはずです。
たいていの良い馬は有力なオーナーの所有馬です。
2019年度12月13日現在における30勝以上しているオーナーの勝利数ランキングは以下のとおり。
オーナー | 出走数 | 勝利数 | 勝率 |
---|---|---|---|
キャロットファーム | 867 | 120 | 13.8% |
サンデーレーシング | 917 | 114 | 12.4% |
社台レースホース | 862 | 104 | 12.1% |
ゴドルフィン | 708 | 98 | 13.8% |
シルクレーシング | 720 | 83 | 11.5% |
松本好雄 | 903 | 61 | 6.8% |
東京ホースレーシング | 376 | 53 | 14.1% |
サラブレッドクラブ・ラフィアン | 812 | 45 | 5.5% |
吉田勝己 | 360 | 43 | 11.9% |
ノースヒルズ | 455 | 40 | 8.8% |
サトミホースカンパニー | 256 | 38 | 14.8% |
金子真人ホールディングス | 262 | 37 | 14.1% |
G1レーシング | 454 | 33 | 7.3% |
ロードホースクラブ | 312 | 32 | 10.3% |
吉田照哉 | 307 | 32 | 10.4% |
ダノックス | 192 | 31 | 16.1% |
ノルマンディーサラブレッドレーシング | 461 | 30 | 6.5% |
現状、ノーザンファーム系の1強ですが、ゴドルフィンがきています。
勝利数・勝率でシルクを上回っているのには驚きました。
まあ、これはデムーロの戦績とは直接関係がないので、簡単にトップ5のオーナーでデムーロが年度別にどの程度勝ってきたかを見ていきたいと思います。
キャロットファーム
年度 | 騎乗機会 | 1着回数 | 勝率 |
---|---|---|---|
2015 | 21 | 3 | 14.3% |
2016 | 18 | 4 | 22.2% |
2017 | 26 | 9 | 34.6% |
2018 | 22 | 7 | 31.8% |
2019 | 11 | 3 | 27.3% |
サンデーレーシング
年度 | 騎乗機会 | 1着回数 | 勝率 |
---|---|---|---|
2015 | 22 | 4 | 18.2% |
2016 | 27 | 6 | 22.2% |
2017 | 29 | 11 | 37.9% |
2018 | 23 | 6 | 26.1% |
2019 | 15 | 2 | 13.3% |
社台レースホース
年度 | 騎乗機会 | 1着回数 | 勝率 |
---|---|---|---|
2015 | 65 | 13 | 20.0% |
2016 | 58 | 10 | 17.2% |
2017 | 47 | 9 | 19.1% |
2018 | 29 | 8 | 27.6% |
2019 | 34 | 6 | 17.6% |
ゴドルフィン
年度 | 騎乗機会 | 1着回数 | 勝率 |
---|---|---|---|
2015 | 12 | 4 | 33.3% |
2016 | 17 | 3 | 17.6% |
2017 | 23 | 5 | 21.7% |
2018 | 18 | 5 | 27.8% |
2019 | 18 | 3 | 16.7% |
シルクレーシング
年度 | 騎乗機会 | 1着回数 | 勝率 |
---|---|---|---|
2015 | 9 | 3 | 33.3% |
2016 | 26 | 7 | 26.9% |
2017 | 29 | 6 | 20.7% |
2018 | 23 | 5 | 21.7% |
2019 | 14 | 4 | 28.6% |
どこも似たようなもので、騎乗数、勝利数が減少しています。これくらい強大なグループの数字となるとどうしても時勢が反映されやすくなるのかもしれません。
デムーロが手にしていた勝ち星はダミアン・レーンや北村友一、その他の短期免許でやってくるジョッキーらの手に渡っているということでしょう。
調教師からの評価
JRAの所属になった2015年から2019年12月13日現在までの期間、厩舎、年度別に勝利数と勝率を集計すると以下のとおりになります。
便宜上トップ20しか表示しておりません。
池江泰寿厩舎名前はデムーロが比較的よかったときにしか名前がありません。このあたりは徹底されている感じです。
いい時だけに乗ってもらうというのは、虫が良過ぎるとか薄情だとも思いますが、ことはトップクラスの競争で起こっていることです。
一方で変わらないサポートをし続けている厩舎もあります。
ランキングの20のレコード中、11を占める角居勝彦、友道康夫、堀宣行の3厩舎。
2019年度角居勝彦厩舎の馬での勝利数は6勝ですが便宜上以下のレコードには追加しておきました。
年度 | 調教師 | 騎乗回数 | 1着回数 | 勝率 |
---|---|---|---|---|
2017 | 角居勝彦 | 48 | 14 | 29.2% |
2016 | 友道康夫 | 29 | 10 | 34.5% |
2017 | 堀宣行 | 37 | 10 | 27.0% |
2018 | 友道康夫 | 25 | 9 | 36.0% |
2019 | 堀宣行 | 35 | 9 | 25.7% |
2016 | 角居勝彦 | 40 | 9 | 22.5% |
2018 | 角居勝彦 | 32 | 8 | 25.0% |
2015 | 友道康夫 | 14 | 7 | 50.0% |
2018 | 堀宣行 | 30 | 7 | 23.3% |
2015 | 角居勝彦 | 27 | 7 | 25.9% |
2017 | 友道康夫 | 16 | 6 | 37.5% |
2019 | 角居勝彦 | 35 | 6 | 17.1% |
期間中、デムーロはG1レースを20勝しています。年平均で4勝。立派な数字です。1番人気での勝利は7勝。意外とプレッシャーには強くないというか繊細なところのある人なのかもしれません。
友道厩舎でのG1勝利がアドマイヤマーズのみというのは意外でした。
近藤利一さんが亡くなられたことでグループや友道厩舎とのコネクションがどうなるのか?
デムーロにとっては大きなサポートなので心配なところではあるでしょう。
年月日 | 人気 | レース名 | 場名 | 調教師 |
---|---|---|---|---|
2019/05/19 | 1 | 優駿牝馬 | ラヴズオンリーユー | 矢作芳人 |
2019/05/05 | 2 | NHKマイルC | アドマイヤマーズ | 友道康夫 |
2018/12/28 | 1 | ホープフルS | サートゥルナーリア | 角居勝彦 |
2018/12/16 | 2 | 朝日フューチュリティ | アドマイヤマーズ | 友道康夫 |
2018/12/02 | 1 | チャンピオンズC | ルヴァンスレーヴ | 萩原清 |
2018/04/01 | 1 | 大阪杯 | スワーヴリチャード | 庄野靖志 |
2017/11/19 | 4 | マイルチャンピオンS | ペルシアンナイト | 池江泰寿 |
2017/11/12 | 5 | エリザベス女王杯 | モズカッチャン | 鮫島一歩 |
2017/10/22 | 1 | 菊花賞 | キセキ | 角居勝彦 |
2017/10/01 | 1 | スプリンターズS | レッドファルクス | 尾関知人 |
2017/06/25 | 3 | 宝塚記念 | サトノクラウン | 堀宣行 |
2017/02/19 | 2 | フェブラリーS | ゴールドドリーム | 平田修 |
2016/11/13 | 3 | エリザベス女王杯 | クイーンズリング | 吉村圭司 |
2016/10/02 | 3 | スプリンターズS | レッドファルクス | 尾関知人 |
2016/04/10 | 3 | 桜花賞 | ジュエラー | 藤岡健一 |
2016/02/21 | 2 | フェブラリーS | モーニン | 石坂正 |
2015/12/20 | 2 | 朝日フューチュリティ | リオンディーズ | 角居勝彦 |
2015/12/06 | 12 | チャンピオンズC | サンビスタ | 角居勝彦 |
2015/05/31 | 1 | 東京優駿 | ドゥラメンテ | 堀宣行 |
2015/04/19 | 3 | 皐月賞 | ドゥラメンテ | 堀宣行 |
角居勝彦ではJRA所属になる前にもヴィクトワールピサなどでビッグタイトルを獲得しています。
飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃の堀宣行厩舎のエースドゥラメンテの主戦ジョッキーでもあり、サトノクラウンが日本での初G1のタイトルを手にしたときのジョッキーもデムーロでした。
現在、デムーロのお手馬のなかでG1ホースは、ラヴズオンリーユーのみといっていいでしょう。しかし、ラヴズオンリーユーもどうなるかわかりません。
アドマイヤマーズ、サートゥルナーリア、スワーブリチャード、キセキ、ゴールドドリームなどはかつてデムーロが主戦ジョッキーでしたが、現在は違います。
乗りたい馬、乗るべき馬に乗れていた頃とは違い、現在のデムーロは奪われる立場にあることがこの表を見てもよくわかります。
まとめ
日本における大成功とは異なり、ヨーロッパではいまひとつだったM.デムーロのキャリア。
現在日本では不遇の時を過ごしています。
しかし、依然としてデムーロと最高の時間を過ごした関係者もたくさんいます。
かつてあった”水物”が姿を消して、いくらか残念な姿を見せていても手厚いサポートは健在です。
そうした期待にコツコツこたえ続けていれば、実力からいって再浮上しても何ら不思議はありません。
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